ブラックフォイルズ、連勝なるか

セーリング

セールGPシーズン4第10戦、バーミューダ大会が5月4、5日(ニュージーランド時間5、6日)に開催されます。今シーズンも上位3チームによる決勝レースが行われるサンフランシスコ大会まで残り3大会となり、大詰めを迎えています。第9戦のクライストチャーチ大会で優勝し、総合首位に立ったチームNZ「ブラックフォイルズ」が連勝して首位を守れるかどうかに注目です。

2019年にスタートしたセールGPは、世界を巡回するセーリングの国別対抗グランプリレースで、今年は10カ国が参加しています。フォイルを水中に出し入れすることでハル(船体)を水面から浮かせること(フォイリング)ができる大型カタマラン(双胴艇)F50を使用するのが特徴です。フォイリングにより、風速の4倍、最高時速は100キロを超すとされ、「海のF1」とも呼ばれています。

波乱続きのクライストチャーチ大会

ドライバーのピーター・バーリングとトリマーのブレア・トゥークのリオ五輪49er級金メダルコンビが率いるチームNZは今季、第3戦のサン=トロペ大会でウィング(マスト)が折れるという大惨事に見舞われました。それでも、第6戦、第7戦で連勝するなどして持ち直し、総合2位で地元のNZ南島で開かれた第9戦クライストチャーチ大会を迎えます。

このクライストチャーチ大会はさまざまな意味で波乱の大会となります。まず、大会の初日がレースコースで絶滅危惧種のイルカが目撃されるという前代未聞の理由で中止となります。このことなどによって、セールGPのCEOを務めるNZヨット界のレジェンド、サー・ラッセル・クーツが規制の多さなどに不満を表明し、来季はクライストチャーチのみならずNZでもレースを開催しない可能性を示し、周囲を混乱させました。

2日目のレースは無事開催されましたが、1回目のフリートレースで総合首位のオーストラリアがフィニッシュマークに激突してリタイアするという、まさかのハプニングが起きます。オーストラリアは船体の損傷によってその後のレースも出走できずに終わりました。

2位のオーストラリアを9ポイントリード

一方のブラックフォイルズは、フリートレースではややもたつく場面もあったものの、フランス、カナダと出場した決勝レースではスタートから他艇を圧倒する圧巻のレースを見せます。最後は今季最多と言われた地元の観客の前で1位でゴールし、総合ポイントでもオーストラリアを上回って首位に立ちます。「ブラックフォイルズ」という新愛称をひっさげて臨んだチームNZにとっては、最高の「デビュー戦」となりました。

そういうわけで、カリブ海のバーミューダで行われる今大会は、ブラックフォイルズが68ポイントの首位で迎えます。2位のオーストラリアは、マークへの衝突が「危険な操船」とみなされて8ポイントの減点を受け、NZとは9ポイント差の59ポイントとなっています。サンフランシスコ大会への出場権がかかる3位争いは熾烈で、スペインの55に続いてフランスが54、デンマークが50ポイントとなっています。また、アメリカズカップではチームNZのサブドライバーとなるネイサン・アウターリッジが前大会からドライバーを務めている最下位スイスの挽回にも期待がかかります。

アメリカズカップへ勢いをつけられるか

現地は風も上々のようで、練習ラウンドでチームUSAが豪快に横転する映像も入ってきています。ブラックフォイルズを率いるバーリングは、サン=トロペでの大惨事を踏まえ「差をつけてトップにいるというのは少し妙な感じはするが、追いかける立場よりも追いかけられる立場の方が間違いなくいい」と意気込んでいます

セーリング界は、アメリカズカップの防衛艇となるチームNZのAC75「タイホロ」が進水するなど、10月にスペイン・バルセロナで開催されるアメリカズカップに対する関心も徐々に高まりつつあります。アメリカズカップ防衛に向けて勢いをつけるためにも、今季のセールGPはチームNZにとって負けられない戦いとなっています。

にきお

50歳(ちょっと手前)の2023年2月からニュージーランドのオークランドで生活しています。大好きなラグビーとセーリングの話題のほか、気になったニュースなどおじさんが見たキーウィ生活のリアルをお届けしています。
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