嵐のアンザック ハリケーンズに土

ラグビー

2024スーパーラグビー・パシフィック第10節はバイウィークも終わって全チームが登場。ANZAC(アンザック)デー(4月25日)があった週だったので、すべてのカードがニュージーランド勢とオーストラリア勢の対決になりました。「永遠のライバル」だけに各地で息詰まる熱戦が展開され、嵐のような試合もありました。

ANZACとは、第一次世界大戦で編成されたオーストラリアとNZの合同軍のことです。初めての参戦となった1915年のガリポリの戦いにちなんで4月25日が祝日となっていて、明け方に追悼行事が開かれたりします。これにちなんで、オーストラリア協会サイドからはワラビーズとオールブラックスの定期戦ブレディスローカップをアンザックデーにやりたいという声も出てますが、ひとまずスーパーラグビーではすべての試合を海をまたいだ対戦カードとして、「アンザック・ウィークエンド・ラウンド」と称しています。

首都決戦、ゲンが悪いキャンベラ

開幕以来全勝を続けていたハリケーンズに土をつけたのはブランビーズでした。ブランビーズは前節、ブルーズに完敗していましたので意外な気もしましたが、ハリケーンズは終始追う展開となり、19ー27で敗れました。

ハリケーンズは徐々にけが人が増えていて、前節でHOアサフォ・アウムアが負傷したため、クラーク・レイドローHCがスピアーズのデイン・コールズにSOSを出したという報道もありました。シーズン中盤となり、総合力や層の厚さの面で疲労が来ているのかもしれません。また、両チームは首都に本拠地を置いていますが、ハリケーンズはこれでキャンベラで6連敗となったそうです。

2位ブルーズは敵地でレッズと対戦しました。ここのところの勢いから言ってもブルーズが優勢と思われましたが、ホームでは今季、チーフスも破っているレッズが後半早々に逆転に成功します。残り15分で11点差までリードを広げられましたが、ブルーズはここから驚異的な追い上げ。No8ホスキンス・ソトゥトゥらのトライとコンバージョンで75分に同点に追いつくと、ラストプレーで途中出場のSHサム・ノックが劇的なトライを挙げ、最終的に41ー34で勝利しました。

これで首位ハリケーンズと2位ブルーズの差は勝ち点1ポイントだけになりました。両チームは2週間後の第12節にイーデンパークで第3節以来の直接対決となります。

また、今季まだ1勝しかしていなかった王者クルセイダーズは地元クライストチャーチで今季初めて会心の試合を見せ、4位だったレベルズを39ー0で零封しました。ワラターズと対戦したチーフスは38ー22で逆転勝ち。ハイランダーズは7-6でフォースとの接戦を制し、モアナ・パシフィカはフィジーでドゥルアと対戦し、17ー24で惜敗しました。

ハイランダーズ、1点差で望みつなぐ

本拠地ダニーデンにフォースを迎えたハイランダーズは、ポストシーズンに望みを残すために負けられない一戦となりました。開始早々はウェールズ代表SOリース・パッチェルが起点となっていい動きを見せますが、ハンドリングエラーなど詰めの甘さが目立ちます。さらにパッチェルが23分に負傷交代して嫌な雰囲気が漂います。それでも、フォースにPGで先制されたものの、前半のビハインドはこの3点にとどめます。むしろ前半終了間際にはWTBティモシー・タヴァタヴァナワイがパントを自らキャッチしてゴールに飛び込みますが、タッチの判定となる惜しいシーンもありました。

後半に入り、46分にSHフォラウ・ファカタヴァがトライを挙げてようやく逆転しますが、53分にPGで1点差に迫られると、その後は膠着状態となります。ハイランダーズは相変わらずハンドリングエラーが目立ったうえに規律も乱れ、7回連続でペナルティーを受けるシーンもありました。それでも何とか1点差を守り切り、オタゴ大学の学生たちなのか、いつも盛り上がるホームの若い観客を沸かせました。

モアナ、追い上げ及ばず

一方、炎天下のフィジーで行われた「太平洋島しょ国対決」のモアナ・パシフィカとドゥルアの一戦は開始早々にドゥルアがディフェンスラインを破って先制トライを挙げます。しかし、その後はモアナも堅実なプレーを見せ、前半は何とか0-17でしのぎます。後半先に取ったのはモアナ。CTBヘンリー・タエフが自らのグラバーキックのこぼれ球を押さえます。その後、ドゥルアに1トライを返されますが、モアナはさらに2トライを挙げ、最終的に7点差に迫りました。

既に過去最多の3勝を挙げていることが示す通り、今年のモアナはかなり強くなった印象があります。この日の試合も敗れはしましたが、スクラムの安定感や堅牢なディフェンスが光りました。また、CTBジュリアン・サヴェアらベテランがチームの統率にいい影響を与えていると見え、途中出場のワラビーズ100キャップのPRセコペ・ケプがチームを鼓舞していたのが印象的でした。

それだけに攻め込んだ後にノックオンなどのミスをしてターンオーバーになるシーンが再三あったのが悔やまれます。フィジーの猛暑があったとはいえ、やはり最後の詰め、英語で言うところのコンシステンシーが今後の課題でしょうか。次節はトンガにハイランダーズを迎えるという楽しみな試合が待っていますが、足を痛めて前半途中で交代したトンガ代表SOウィリアム・ハヴィリの状態が気掛かりです。

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