辛勝 「魔の最終クォーター」なお

オールブラックス対オーストラリア、31対28 ラグビー

オールブラックス(AB)は9月21日、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)のオーストラリア代表ワラビーズとの第1戦をのシドニーで行い、31ー28で勝利しました。序盤に立て続けにトライを奪い、大勝の予感もありましたが、後半は沈黙。最後の20分間は再び得点できない「魔の最終クォーター」となり、終わってみれば3点差の辛勝でした。両国で争われるブレディスローカップの防衛には成功したものの、なお課題を残した試合となりました。

オールブラックス新旧政権の対決

前節までの世界王者スプリングボクス戦と違い、永遠のライバルとはいえ世界ランキング9位で、昨年のワールドカップでの惨敗から再建途上のワラビーズが相手となる今節。ABはメンバーを若手の起用に切り替えることも予想されましたが、スコット・ロバートソンHCは南ア戦から大きくメンバーを入れ替えなかったばかりか、ボーデン・バレット(ブルーズ)を先発FBに戻すなどより保守化した布陣としました。

ワラビーズのジョー・シュミットHCは、ABのイアン・フォスター前HCの元でアシスタントコーチを務めていたので、ABの「新旧政権」の対決との意味合いもあった今回の対戦。今回の保守的布陣には、TRCがここまで1勝3敗となっていて是が非でも負けられないというだけでなく、今のABの手の内を知り尽くしているシュミットHCへの警戒感も表れていたのかもしれません。

ただし、ボーデン・バレットは試合前に体調不良によってメンバーから外れ、先発FBは結局、前節と同じくウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)となり、右WTBはセヴ・リース(クルセイダーズ)に。控えとして今季のスーパーラグビーのブルーズで目覚ましい活躍をしたSO/CTBハリー・プラマーがベンチ入りしてデビューを待つことになりました。

序盤圧倒、後半沈黙

ABは試合開始早々、ジョーダンが抜け出して1分にトライを挙げて重圧を吹き飛ばします。その後も8分にCTBリーコ・イオアネ(ブルーズ)がスーパーラグビーも含めた自身の今季初トライを挙げると、14分にはWTBケイレブ・クラーク(ブルーズ)も続き、圧勝ムードさえ漂います。

ABは前半だけで4トライを重ねますが、ワラビーズも2トライを返してくらえ付き、前半は28ー14で終えます。序盤の勢いの割には点差が開かなかったうえ、ABは前半終了間際にCTBジョーディ・バレット(ハリケーンズ)が足を負傷してそのまま交代してしまいます。

後半に入り、ABは44分にSOダミアン・マッケンジー(チーフス)のPGで31ー14と差を広げますが、そこから歯車が狂い始めます。そのまま最後の20分、これまでのTRC4試合でABが得点で来ていない「魔の最終クォーター」に入ると、ワラビーズが突進を繰り返して最終的にディフェンスラインをこじ開けてトライをもぎ取り、31ー21と10点差とします。

しかもABはこの間の一連のディフェンスで反則が重なり、ジョーディ・バレットに代わって途中出場のCTBアントン・レイナート=ブラウン(チーフス)がオフサイドでイエローカードを受け、14人となってしまいます。AB選手がこの最終クォーターでシンビンとなるのは、これで何と3戦連続となりました。

数的優位となり、ホームの大歓声も背に受けて勢いに乗るワラビーズがさらにABゴール前に攻め込みますが、交代出場のFLルーク・ジェイコブソン(チーフス)のジャッカルで何とか難を逃れます。しかし、その後、さらなる悲劇がABを襲います。先発左WTBとしていい動きを見せてトライも挙げていたクラークが、ワラビーズのパスに手を出し、故意のノックオンの判定を受けてシンビンとなってしまいます。

13人となったABに対し、ワラビーズが怒涛の攻撃を見せますが、今度は6番で再び先発していたFLウォレス・シティティ(チーフス)のジャッカルで何とか難を逃れます。しかし、レイナート=ブラウンが戻った後の最終盤の78分、この試合で終始いい動きを見せていたワラビーズFBトム・ライトがついにゴールラインを割ります。

点差はわずか3点となり、あわや大逆転か、という雰囲気も高まりますが、キックオフを受けたオーストラリアのボールキャリーをNo8アーディ・サヴェア(モアナ・パシフィカ)がうまくモールとしてターンオーバーを勝ち取り、何とかABが逃げ切りに成功しました。

この試合、ABが負けていたら当然、相当大きな衝撃となっていたので、ひとまず勝ててよかったとは思います。しかし、特に序盤の勢いと、ワラビーズの穴だらけのディフェンスラインを見ていて、「やはりメンバーを落として若手をもっと試すべきだったのではないか」と思わされたくらいだったので、後半の戦いぶりは引き続きABの重い課題と言って間違いありません。

賭けの要素、マネジメントに難

最大の痛手は2枚のイエローカードでしたが、それに加えてやはり英語で言うところの「コンシステンシー(一貫性、継続性)」の欠如も大きかったと思います。特にこの試合は司令塔マッケンジーの粗が目立ちました。ABのトライと思われたシーンでフォワードパスをしたり、フリーになっている選手に不要なフリップパスをしたりしてチャンスをつぶすシーンが後半に続いていたからです。

マッケンジーはトリッキーなプレーが持ち味でもあり、パスもギリギリの線を狙うことが多くなりがちです。アクロバティックなプレーが成功すれば観客も盛り上がり、チームに勢いを与えますが、失敗が続くと当然、勢いを相手に渡すことにつながります。賭けの要素が大きいマッケンジーのプレースタイルは、80分間を通じてのゲームマネジメントの観点からは、かなりリスキーです。

その意味では、現状のABはやはりベテランのボーデン・バレットをFBに入れた「ダブル司令塔」体制の方がリスクヘッジができるような気がします。ロバートソンHCが当初、ベンチからのインパクトを諦めてボーデンを先発FBに戻していたのはそのような狙いもあったんかもしれません。

ボーデンの体調不良でそれはかなわなくなった訳ですが、それであるなら、控えのSOだったプラマーを早めに投入してもよかったと思います。結果論になってしまいますが、プラマーはワラビーズに押し込まれまくっていた最終盤の76分に投入されてABデビューするということになってしまい、何もできないまま試合を終えました。

さて、次週はホームの首都ウェリントンでの第2戦となります。地元ハリケーンズのCTBビリー・プロクターやFBルーベン・ラヴ起用の呼び声が高いですが、ウェリントンでは今季既にアルゼンチンに敗れており、テストマッチで6年間勝利のないゲンの悪い土地です。さらにこのワラビーズとの第1戦がまさかの大苦戦となり、どうなるか読めなくなってきました。

タイトルとURLをコピーしました