総会と抗議と消滅、怒涛の木曜日

今週のニュージーランドのニュース 5月25~31日 ニュース

毎週、ニュージーランドで気になったニュース3本を紹介していますが、今週(5月25~31日)は「楕円球どこへ」の番外編的に、慌ただしかった5月30日木曜日から選びました。統治機構改革を巡るNZラグビー協会の臨時総会、NZ政府の予算発表、レベルズの終焉です。

NZR総会、地方協会案を採択

この木曜日の最初の出来事は、午前中に開かれたNZラグビー協会(NZR)の臨時総会でした。ガバナンスレビューの結果が昨年8月に公表されて以来、議論が続き、特にNZラグビー選手会と地方協会の激しい対立から「シビル・ウォー(内戦)」とまで言われていた統治機構改革の決着が見込まれていました。

総会では、26ある地方協会と先住民族マオリラグビー委員会が議決権を持ち、それぞれ規模などによって票数が割り振られています。今回の統治機構改革案の採択には3分の2以上の賛成が必要でした。

最初に採決されたのは、レビュー結果を尊重して理事会の全理事を選び直すという内容の、現理事会が提案した第1案でした。選手会とマオリ委が事前にこの案に賛意を示していましたが、理事会と選手会には議決権がありません。投票の結果、賛成31票、反対59票で否決されてしまいます。

続いて、理事会9人のうち3人は地方協会の経験者を充てるとする地方協会側が提案していた第2案が賛成69票、反対21票で可決され、採択されました。この第2案は、地方協会の中でも規模の大きい北島の大都市オークランドやウェリントンのほか、クライストチャーチがあってNZラグビーのメッカとして知られる南島のカンタベリーなどの地方が中心となって提案していましたので、当然と言えば当然の結果でした。

選手会、トーンダウン

私は過去のまとめ記事「ラグビー王国の『シビル・ウォー』」で、この問題を2005年の日本の郵政改革になぞらえましたが、選手会は第2案を「現状維持」と批判していて、この第2案の採択で、まさに「抵抗勢力」たる地方協会側が勝利したことになります。当時の日本では、政府が提案していた郵政民営化関連法案が参議院で否決されると、小泉純一郎首相が即座に衆議院の解散・総選挙に打って出て、日本中が大騒ぎとなりました。今回のNZRも大混乱に陥ることが予想されましたが、だいぶ様子が違いました。

まず、第2案が採択された場合はNZRから独立してプロ競技運営のための新組織を立ち上げると宣言していていた選手会です。総会の結果を受けてコメントを求められたロブ・ニコルCEOは、新組織設置の方針は強調したものの、「この先2、3カ月は混乱する」と述べ、即応はしない姿勢を示します。さらに「(NZRから)『分離する』と言ったことはない」と念押しするなど、トーンダウンを印象付けました。

勝利した形となった地方協会側もさらなる話し合いに前向きな姿勢を示し、理事会の提案に「職を賭す」とまで言っていたパッツィ・レディ理事会議長に至っては休暇旅行で日本に行っていて不在でした。事態の重大性にしては、何とも締まらない結果になったと言わざるを得ません。

国家予算案に合わせ大規模抗議

さらに、この統治機構改革問題に対するファンや国民の無関心を心配する声も上がっていましたが、奇しくもこの日午後には政府の国家予算案の発表がありました。国民の生活に直結する話題だけに、テレビのニュースも予算案の話題一色になり、NZRの臨時総会は隅に追いやられたような形になっていました。

また、このブログでもハカでの政府批判を紹介しましたが、公用語であるマオリ語の扱いなど、現政府の政策に不満を持つマオリの人たちは多くなっています。予算案は政府の方針や考え方が端的に反映されるものであるため、マオリの人たちはこの日の予算案発表に合わせ、全国でデモ行進「ヒーコイ」を実施しました。

NZRの騒動よりも、この大規模な抗議行動の方がより切実な「戦い」とみなされ、各地の現場からの中継を含めてニュースでも大きく取り上げられていました。

経営危機のレベルズ、今季限り

極めつけは、クック海峡の反対側、オーストラリアから届いたニュースでした。経営危機に陥っていたスーパーラグビーのレベルズが今季限りで消滅することが正式に決まったのです。

レベルズが本拠地を置くメルボルンは、ラグビーリーグの人気がとりわけ高いとされ、2011年にスーパーラグビーに参戦したものの、負債が膨らみ続けました。今年1月には管理下に入り、救済案もまとまりましたが、オーストラリアラグビー協会は継続を断念して救済案の採用を拒否しました。

特に収益面でのラグビーの不振は欧州など世界中で指摘されています。足元のスーパーラグビーでも、観客数の減少などが指摘され、レベルズに続き、モアナ・パシフィカも存続が危ぶまれる事態になっています。NZRこのような問題への有効な対応策を全く示せていません。

このように、NZRの臨時総会でクライマックスを迎えたNZラグビー界の「シビル・ウォー」ですが、同じ日に起こったそれ以外のニュースによって、「そんなことをやっている場合なのか?」という印象が強まる結果となりました。具体的に何をするための統治機構改革なのか不明確なまま議論や対立を続けた挙句、世の中の動きから隔絶しているかのような締まらない結末は、この国を代表するスポーツ、いわば「国技」であるというNZラグビー界の「特権意識」も反映されているような気がしました。

このままでは、ラグビー自体が世の中の「抵抗勢力」とみなされないという思いさえ残った怒涛の木曜日でした。

タイトルとURLをコピーしました