ラグビーのニュージーランド代表オールブラックス(AB)は11月23日(NZ時間24日)にイタリア・トリノのアリアンツスタジアムでイタリア代表を29ー11で降しました。前週のフランス戦の敗戦を受けてベストに近い布陣で臨んだABでしたが、思い通りの試合運びはできませんでした。鳴り物入りで登場したスコット・ロバートソンHCが率いる今季のABでしたが、初年のテストマッチは10勝4敗。最終戦も今季を象徴するような消化不良を残す形となってしまいました。
ペレナラ最後のハカ、抗議行動に「連帯」
この日の試合は、日本のリーグワンに移籍するFLサム・ケイン(サンゴリアス)とSHのTJペレナラ(ブラックラムズ)の最後の代表戦となりました。ベンチ入りしたペレナラが試合前のハカをリードしました。
ペレナラはそのハカの口上の中で、NZで前週に起きていた先住民族マオリの権利を制限するとされる法案に対する大規模な抗議行動に連帯するメッセージを発したそうです。ペレナラはハリケーンズの女子チームによる「政府批判ハカ」にも連帯を表明するなど政治的な発言で知られており、ペレナラらしい代表引退となりました。
セリエAの名門ユベントスのホームスタジアムで行われた試合には、既に気温も下がる中、大勢の観客が詰め掛けました。ただ、試合は不安定な立ち上がりで、両チームともハンドリングやキックのエラーが目立ちました。
対AB未勝利のイタリアが先制
11分にホームのイタリアが、仏トゥーロンに所属するSOパオロ・ガルビシのPGで先制します。ABは14分に先発SOボーデン・バレット(ブルーズ)のPGに追い付いたものの、その直後のキックオフでオブストラクションの反則を取られて再びPGを決められ、3-6でリードされます。
さらに19分にはキャプテンのLOスコット・バレット(クルセイダーズ)がブレイクダウンの際にクロコダイルロールの反則でイエローカードを受けます。それでも14人の時間帯を無失点でしのぎ、逆に23分にSHキャム・ロイガード(ハリケーンズ)が密集の脇をすり抜けてトライを挙げて逆転に成功します。
さらに38分には展開からFBウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)もトライを挙げ、コンバージョンも決まって17ー6となり、比較的いい雰囲気で折り返しとなります。
後半に入り重苦しく
しかし、後半に入ると重苦しさが増します。ABは決め手を欠く中でイタリアにボールを渡す場面が目立ちます。その結果、イタリアに連続攻撃を受け、49分にけがのジョーディ・バレット(ハリケーンズ)に代わって先発出場していたCTBアントン・レイナート=ブラウン(チーフス)が累積ペナルティでイエローカードを受けます。
ABは1人少ない時間帯を再び何とか無失点で切り抜けたものの、その後もなかなか突破口が見つからないまま時間が過ぎます。このため、試合を通じて優位に進めていたスクラムからペースをつかもうと、イタリア陣内でのペナルティでスクラムを選択します。その結果、69分になってようやくペナルティ後のスクラムから回してWTBマーク・テレア(ブルーズ)がゴール左隅に持ち込み、後半最初の得点を挙げます。
しかし、75分にはイタリアが逆サイドへのロングキックからつなぎ、今年のシックスネーションズ最優秀選手、CTBトンマーゾ・メノンチェッロがトライを挙げて食い下がります。それでもABは終了間際、イタリアのチップキックを拾ったボーデン・バレットが抜け出してトライを挙げて試合を決めました。
厳しい3連戦終え、気が抜けたか
終わってみればトリプルスコア以上の点差となりましたが、ABの攻撃機会が少なかったうえにイタリアのがむしゃらなディフェンスに苦しんでいる姿が目立ちました。試合内容としては、どことなく勢いを欠いた試合が多かった今季のABを象徴するような、フラストレーションの残るものでした。
欧州の強豪であるイングランド、アイルランド、フランスとの3連戦を終えてどこか気が抜けたのかもしれませんし、前週で垣間見えた疲れが出ていたのかもしれません。その意味では、世界ランキング10位で、これまで一度も負けたことがないイタリアとのテストマッチであるにもかかわらず、前週のフランス戦からあまりメンバーを変更しなかったことが裏目に出たように思いました。
午後9時10分キックオフ、悪影響か
また、イタリア北部のトリノは既に寒くなっているにも関わらず、この試合のキックオフ時間は土曜日の午後9時10分でした。これは12時間の時差があるニュージーランドの日曜日午前9時10分にあたり、NZでの視聴者にとっては好都合ではありました。ただ、欧州との時差を考慮した夕方の試合開始はスーパーラグビーでもメディアなどからスタジアムの集客面での悪影響が批判されていましたが、この試合では試合時間の遅さが締まりのないパフォーマンスにも影響を及ぼしていたような気がします。
何はともあれ、これでクルセイダーズで7連覇を成し遂げた「レーザー」ことロバートソンHC体制初年のテストマッチがすべて終了しました。今季のABの戦いぶりについては、時機を見て改めて総括したいと思います。



