ツキを呼び込み接戦制す

オールブラックス24点、イングランド22点 ラグビー

ラグビーのニュージーランド代表オールブラックス(AB)は11月2日(NZ時間3日)にイギリス・ロンドンのトゥイッケナムスタジアムでイングランド代表を24ー22で破りました。後半に逆転されて終盤までリードされる苦しい展開となりましたが、最後はツキも味方につけて何とか接戦を制し、欧州遠征を白星でスタートさせることに成功しました。

ABはこの日から、毎週末にイングランド、アイルランド、フランス、イタリアと対戦する「史上最もタイトな日程」とされる欧州遠征となりました。このため、先週の日本代表戦の時点で、既に主力の11人を先にイギリス入りさせ、今回のメンバーもその先遣隊を中心とする万全の態勢の臨んでいました。7月の連戦はいずれも辛勝だったこともあり、ABにとっては落とせない試合となっていました。

後半早々に逆転許す

イングランドラグビーの聖地トゥイッケナムはほぼ満員。ABのハカを巡っては、この試合には出場しないイングランド代表PRのジョー・マーラーが「バカバカしいのでやめるべきだ」とSNSに投稿して物議を醸していましたが、HOコーディ・テイラー(クルセイダーズ)のリードでハカが始まると、横一列にならんだイングランドの選手たちがハーフウェイラインまで前進して受け止める形となりました。緊張感が高まる中、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)最終戦に続いて10番をつけたボーデン・バレット(ブルーズ)のキックオフで試合が始まります。

試合は開始4分にSOマーカス・スミスのPGでイングランドが先制。さらにその直後にABはフォワードの大黒柱と言っていいテイラーをヘッドノックで欠くことになる想定外の事態となります。イングランドは積極的に得意のキッキングゲームを仕掛けて優位に試合を進めますが、ABは8分、ブラインドサイドフランカーで出場していたウォレス・シティティ(チーフス)の絶妙なオフロードパスが、この試合は右ウイングに入っていたマーク・テレア(ブルーズ)につながり逆転トライにつながります。

その後、イングランドがPGを1本返しますが、27分にはFBウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)がボーデンと鮮やかにクロスしてボールを受けてそのままフィニッシュ。イングランドはさらに2PGを決めますが、前半は14ー12のABリードで折り返します。

しかし、後半開始早々の43分、先発SHだったコルテス・ラティマ(チーフス)のパスをスミスにインターセプトされてしまい、イングランドに逆転トライを許し、14ー19となります。後半の戦いぶりに難がある今季のABだけに、嫌なムードが漂い始めます。

「出戻り」テレア値千金トライ

さらに、58分には左WTBケイレブ・クラーク(ブルーズ)のオフロードを受けたボーデンがそのままインゴールに持ち込みますが、TMOの結果、その前のプレーでクラークが意図的ノックオンの判定を受けます。映像を見る限り、タックルに行っているともとれるプレーだったので、クラークにとっては不運と言えば不運でしたが、一方でイエローカードを受けなかったのはその後の試合展開を考えると不幸中の幸いでした。

試合はそこから両チームがPGを1本ずつ決めて17ー22に。試合時間残り15分となりますが、今度はボーデンがヘッドノックでHIAを受けることになってしまいます。このため、フルバックとして途中出場したダミアン・マッケンジー(チーフス)に代わって退いていたテレアがグラウンドに戻ってくることになりました。

ABはイングランドのゴール前のペナルティでサインプレーを選択しますが、うまくいきません。それでもボールを回して、マッケンジー、ジョーダンとつなぎ、最後は右のサイドライン際でボールを受けたテレアが体を巧みに回転させる得意の体勢で粘ってゴール右隅にトライします。恐らくテレアでなければ挙げられなかったトライだったので、結果的には一度退いたテレアが復帰していたことがABを救ったことになりました。さらにマッケンジーが難しい角度のコンバージョンを決めて76分に24ー22と逆転に成功します。

土壇場のキック、2度外れる

しかし、まだドラマが待っていました。後のないイングランドは盛んに攻め込みます。ABは防戦一方となり、センターで途中出場していたアントン・レイナート=ブラウン(チーフス)がノーボールタックルでイエローカードを受けます。レイナート=ブラウンはTMOの結果、ヘッドコンタクトをしていたことも判明し、最終的にこちらがイエローカードの原因となります。

イングランドはAB陣内10メートルラインのやや内側からショットを選択。スミスに代わって入っていたベテランSOのジョージ・フォードのキックは右ポストに当たって跳ね返ります。

ボールは途中出場のLOパトリック・トゥプロトゥ(ブルーズ)がキャッチしますが、タックルを受けてゴール前でノックオンします。なお意気上がるイングランドはスクラムからドロップゴールを狙いますが、ABがスクラムを崩していったん阻止。フェーズを重ねた後、ファイナルプレーでフォードが狙いますが、ドロップキックは右にそれ、そのまま試合終了となります。

プロップの層の厚さ効く

さて、結果としては勝ちましたが、負けていても不思議ではない試合だったので、ABにとってはペナルティの多さ(11回)など課題が残ったのも確かです。ただ、後半は再三スクラムでペナルティを取り、最後も相手ボールのスクラムにプレッシャーをかけたことが勝利につながったと言えるので、ABのプロップの層の厚さが効いたとも言えます。この試合は正ルースヘッドのイーサン・デグルートを「内規違反」で欠いていただけに、なおさらです。

しかし何より、ABはこの試合、ツキを味方につけたことが大きかったと言えます。フォードが逆転のキックを2回外しただけでなく、クラークが意図的ノックオンでイエローカードを受けなかったり、一度交代した後に期せずして戻って来たテレアがトライを挙げたりといった偶然の要素が勝敗を左右しました。

今季のABはこれまで、どちらかと言うとツキに見放されているような場面が多かったように思うので、この試合によって流れが変わるかもしれません。また、TRCではなかなか得点さえできず「魔の最終クォーター」と言われた最後の20分に逆転したのも大きかったようにように思います。

ただ、次週と次々週対戦するアイルランドとフランスは世界ランキングがそれぞれ1位、4位で、5位のイングランドよりも上です。厳しい戦いになるのは間違いなので、ABがメンバーを含め、どう修正してくるのかが注目されます。特にボーデン・バレットとテイラーのヘッドノックの診断結果いかんによってはスコット・ロバートソンHCは大きな変更を余儀なくされることになりそうです。

タイトルとURLをコピーしました