層の厚さの差で逆転負け

オールブラックス対南アフリカ、27対31 ラグビー

オールブラックス(AB)は8月31日、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)の南アフリカ代表スプリングボクスとの第1戦をヨハネスブルクのエリスパークで行い、27ー31で敗れました。後半の残り15分まで10点リードしていましたが、南ア自慢の「ボム・スコッド」の迫力に押され、規律も乱れて逆転負け。スコット・ロバートソンHC体制でアルゼンチンとの第1戦に続いてテストマッチ2敗目となりました。

序盤はオールブラックスペース

1点差でスプリングボクスが4度目の優勝を決めた昨年のワールドカップ決勝以来の対戦となった両チーム。南アラグビーの聖地エリスパークには満員の6万2000人超の観客が詰め掛け、ABのハカの掛け声をかき消すほどの歓声で試合前からスプリングボクスを後押しします。しかし、試合はABペースで始まります。

試合開始早々、南ア陣内に攻め込むと、パスがつながればあわやABの先制トライという場面で、名手ウィリー・ルルーを抑えて南アの先発FBだったアフェレレ・ファシが反則タックルをしてイエローカードを受けます。ABは左コーナーでのラインアウトからモールを押し込み、最後はHOコーディ・テイラー(クルセイダーズ)が押さえて先制します。

ただ、ここからはやや落ち着かない試合展開となります。南アのリスタートのキックオフは微妙なダイレクトタッチの判定となり、センタースクラムに。そこから出たボールをSHのTJペレナラ(ハリケーンズ)がロングキックして見事な50ー22を決めます。しかし、その直後にそのペレナラがレフェリーを怒鳴ったと判定されてペナルティを受けてしまいます。

さらにその後のタッチキック後のラインアウトを南アが押し込み、先発HOのボンギ・ムボナンビがサイドを突いてトライを決めます。リプレイ映像ではインゴールでABのCTBジョーディ・バレット(ハリケーンズ)が絡んだ際にボールのコントロールを失ったように見えましたが、TMOの介入もなく、試合後に物議を醸すことになりました。しかも、南アの先発SOサシャ・ファインバーグ=ムンゴメズルのコンバージョンが時間切れで認められないというオマケもつきました。

しかし、ファインバーグ=ムンゴメズルはその後の29分に60メートル近い距離からのPGを決めて汚名返上し、南アが8-7で逆転に成功します。それでもABは32分、南アがノックオンしたボールをテイラーが拾ってつないで回し、最後は左ウィングで先発出場していたケイレブ・クラーク(ブルーズ)がフィニッシュして再逆転。南アはさらにPGを1本決めて、12ー11でABが1点リードして折り返します。

終盤に2トライ奪われる

後半開始早々には南アが中盤のラインアウトから回したボールをジョーディ・バレットがインターセプトしてそのままトライ。その後は両チームPGで加点しますが、51分にはクラークがこの日2本目のトライを挙げて27ー17の10点差とします。

ところが、67分に交代出場していたルースヘッドプロップのオファ・トゥウンガファシ(ブルーズ)がモールのコラプシングでイエローカードを受けてしまいます。南アは直後の68分に交代出場のクワッガ・スミスがトライを奪い、74分には同じく交代出場のSHグラント・ウィリアムズもトライを決めて逆転し、そのまま試合終了となります。

全体的な印象としては、ABが思ったより健闘したというのが正直なところでした。今年はこれまでのところ、プレッシャーに対する弱さが露呈し、イングランドの連戦も辛勝でしたし、アルゼンチンにはホームで負けていました。さらにロバートソンHCの右腕となるべきアタック担当のアシスタントコーチ、レオン・マクドナルドが電撃的に退任するというトラブルも重なりました。そんな中、「昨年よりも強くなっている」との声さえ聞かれる世界王者との対戦となる今回の南ア遠征は、ニュージーランドではあまり期待されていなかったように思います。

それでも、ふたを開けてみれば試合の4分の3は互角以上の戦いを見せました。SOダミアン・マッケンジーはうまく試合をコントロールしていましたし、ウィングのクラークは2トライを挙げただけでなく、ハイボールへのエンゲージメントでも持ち味を生かしていました。フォワードもスクラムは互角でしたし、第3列も今年初の先発出場となったサム・ケインが効いていたように思います。

「南アは先発できる選手が多い」

では、何がいけなかったのか。ロバートソンHCが敗因として真っ先に挙げていたのはディシプリンでした。ペナルティは南アの5に対してABは14でした。やや不可解な判定が多かったのは事実ですが、スクラムで負けて取られたペナルティはなかったと思うので、14はやはり多いでしょう。結果的にその差がトライ数4-3で勝ったABが敗れる結果につながったと言っても過言ではありません。

しかし、何と言っても、選手層の厚さの違いが地力の差となって表れていたように思います。南アはこの日もリザーブにFWを6人入れる「ボム・スコッド」を組みました。しかもそのほとんどを後半開始早々の43分までに投入しています。これに対し、ABはリザーブの投入を始めたのが55分のPRトゥウンガファシからで、フロントローの交代を終えたのはテイラーとアサフォ・アウムア(ハリケーンズ)が入れ替わった65分です。

しかも、ロバートソンHCが「南アには先発できる選手がたくさんいる。層の厚みがあり、それを生かしている」と指摘したように、スプリングボクスは先発とリザーブのバランスが絶妙です。例えば、フッカーで言えば先発のムボナンビとリザーブのマルコム・マークスでは甲乙つけがたいですし、ワールドカップ優勝メンバーのSOハンドレ・ポラードやLOエベン・エツベスがベンチにいるというのはものすごい迫力です。先発の15人を重視するのではなく、リザーブも含めた23人全体で前後半のゲームプランを考えているのが分かります。

これに対し、ABは選手層の薄さもあって、交代を躊躇しているように見受けられました。このあたりが、特にエリスパークのような高地にある会場ではチーム全体の体力の消耗にも表れていたように思います。後半はキックのミスも目立ちましたし、ラックにフォワードが誰も入らずにターンオーバーされるもったいないシーンもありました。

ABは今季のTRCでは今のところ、最後の20分間に得点を挙げられていません。まさかの敗戦となったアルゼンチンとの初戦はもちろんのこと、リベンジの大勝となった第2戦も最後の得点は後半開始早々の42分でした。今回の敗戦を教訓として、選手の起用法に変化があるのか。ABは大物のベテランが大勢抜けて選手層が薄くなっているうえにけが人も多く、ロバートソンHCの保守的な傾向もあり、なかなか難しいような気もしますが、ケープタウンで行われる9月7日の第2戦に注目です。

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