オールブラックス対イングランドのテストマッチ第2戦は7月13日(土)、ニュージーランドの最大都市オークランドのイーデンパークで行われ、オールブラックスが24ー17で勝ちました。これでスコット・ロバートソンHC体制下で連勝スタートという形にはなりましたが、前週の1点差での勝利に続いての辛勝で、課題も多く見えた試合になりました。
満員の聖地イーデンパーク、後押し
オールブラックスはこの試合、1戦目で負傷したSHのTJペレナラの代わりにフィンレイ・クリスティが先発となり、初キャップの若手コルテス・ラティマがベンチに入ったこと以外は1戦目からほとんどメンバー変更なしで迎えます。試合は開始早々から目まぐるしく攻守が入れ替わり、その後のクロスゲームを予感させるような立ち上がりとなります。
先制したのはAB。10分に左サイドのラックのボールをピックアップしたWTBマーク・テレアがそのまま左隅に飛び込みます。テレアはワールドカップを含めた昨シーズンから続く好調さをこの試合でも発揮します。満員の観客も大いに沸きますが、直後の13分にイングランドの司令塔マーカス・スミスの絶妙なキックパスが決まり、7ー7の同点とされます。その後、この日もSOで先発したダミアン・マッケンジーがPGを2本決めてリードしますが、終了間際の40分に再びスミスにキックパスを決められ、13ー14のイングランドリードで折り返しとなります。
後半に入ってからもPGで加点されたうえ、イングランドがゲームを支配します。しかし、流れを変えたのは49分に投入されたボーデン・バレット。フルバックのスティーブン・ペロフェタとの交代でしたが、攻撃ではしばしばファーストレシバーの位置に入り、効果的なキックを見せた他、ランプレーでも抜け出して60分の逆転につながるテレアのトライを演出します。オールブラックスはその後、2本のPGを加えて残り5分少々の段階で7点差とします。しかし、終盤は再びイングランドに攻め込まれ、最後はTMOによるゴールライン手前でのイングランドのオブストラクションの判定で辛くも逃げ切りました。
オールブラックスは、30年負けていないというニュージーランドラグビーの聖地イーデンパークの試合で、何とかその伝統を守った形となりました。しかし、一時は逆転を許し、かなり危うい場面の連続で、満員の大観衆の後押しがなければ1973年以来というイングランドにこの地での勝利を献上していた可能性もある試合でした。
ボーデン、途中出場で流れ変える
その意味では途中出場のボーデン・バレットのインパクトは大きく、キックやランだけでなく、最後は結果的にオブストラクションにはなったものの、あわやトライという場面で体を下に入れてグラウンディングを阻止する場面もありました。試合後の選手レーティングでも、珍しく途中出場ながら最高点の9点をマークしていたのも納得の活躍でした。マッケンジーとペロフェタにこのバレットを加えたSO・FBをこなす世界的レベルの3選手がいるのはABにとってかなりの強みです。また、53分に交代出場でABデビューを果たしたラティマも、ランプレーを見せる場面はなかったものの、きびきびとしたボールさばきで流れを変えることに貢献した点も好材料と言えます。
また、セットプレーではスクラムが安定していたことに救われました。なかなか思うようにペナルティーを取ってもらえない場面はあったものの、1番で先発したイーサン・デグルート、タイトヘッドで途中出場したフレッチャー・ニュウェルの強さは光りました。押し込まれた場面もほとんどなく、イングランドに再三攻め込まれながらも何とか逃げ切った要因の一つになったように思えました。
ラインアウト、悲劇的
一方で、課題も多く見えた試合でした。特にラインアウトは悲劇的で、マイボールを無難に確保できた場面はほとんどなかったと言っていいくらいでした。後半は焦りも見え、ジャンプもしていないイングランドのLOマロ・イトジェにマイボールを直接投げ込んでしまうという信じられないような場面もありました。指摘されていた通り、長らくABのラインアウトの中心だったレジェンドのサム・ホワイトロックとブローディ・レタリックが抜けた穴の大きさを思い知らされる結果となり、このラインアウトの修正・強化が今後の最大の課題となりそうです。
また、世界的に見ても層が厚いと言われているABのフォワードバックローですが、No8のアーディ・サヴェアは何度か突進で見せ場を作ったものの、全体的にはあまり目立たなかった印象でした。ここもメンバーの入れ替えも含めて今後修正が図られるかもしれません。
新体制にしては珍しく、2試合でABデビューがこの日のラティマだけというかなり保守的に布陣でスタートしました。一つのピークを迎えた昨年のワールドカップ時から比べても両ロックだけでなく、SOリッチー・モウンガやSHアーロン・スミス、FLシャノン・フリゼルら主要なメンバーが抜けましたから、「常勝」を求められるABとしては、新人を大量投入して「冒険」をするわけにはいかないのでしょう。その辺りに日本代表との際立つ違いを感じた試合でもありました。


