ラグビーのニュージーランド代表オールブラックス(AB)のスコット・ロバートソンHCは、11月8日(NZ時間9日)にダブリンのアビバスタジアムで行われるアイルランド戦のメンバーを発表しました。世界ランキング1位に挑むこの試合は、ABにとって今回の欧州遠征最大のヤマ場。前週のイングランド戦の先発からはヘッドノックで出場不能になった2人を入れ替えただけの最小限の変更で、死闘となった昨年のワールドカップ準々決勝の再戦に臨みます。
イングランド戦は、前週の日本遠征の際に既にイギリス入りしていた先遣隊11人を中心とする強力布陣で臨みました。試合は今季のABが苦手としていた終盤に力を発揮し、今季の総決算となる欧州遠征を白星でスタートさせることができました。
HOアウムア、スローイング鍵
ただ、そんな中、チームの大黒柱でフッカーのコーディ・テイラー(クルセイダーズ)が試合開始早々、またスタンドオフとして先発していたベテランのボーデン・バレット(ブルーズ)が後半にそれぞれヘッドノックを受け、規定によりアイルランド戦は出場不能となりました。このため、先発HOはアサフォ・アウムア(ハリケーンズ)が務め、10番にはダミアン・マッケンジー(チーフス)が返り咲くことになりました。
アウムアは今季ここまで、サミソニ・タウケアホ(チーフス)をケガで欠くこともあって、テイラーに続く2番手のフッカーを務めてきましたから、順当な人選と言えます。ただ、イングランド戦はテイラーがHIAを受けることになった試合開始5分から、今のフッカーとしては長時間となる75分間プレーしました。金曜日に行われるアイルランド戦はそこから中5日ということもあり、疲労がやや気になります。
また、アウムアはボールキャリーやディフェンスには定評がありますが、ラインアウトのスローイングに難があるとされ、イングランド戦でも特に後半は乱れるケースが目立ちました。控えHOに入った若手のジョージ・ベル(クルセイダーズ)も大舞台の経験が不足しているのは間違いなく、ABにとってアイルランド戦はラインアウトの安定が鍵を握りそうです。
10番マッケンジー、控えペロフェタ
一方のマッケンジーは、ロバートソン体制になった今季、8試合連続で10番を着けながら、チームが試合終盤で失速続きだったことなどから、80分を通じてのゲームマネジメントに課題が指摘されていました。このため、ザ・ラグビーチャンピオンシップ最終戦のワラビーズ戦と先週のイングランド戦はボーデンにポジションを奪われた形となっていました。特にイングランド戦ではインパクトプレイヤーとしての良さを存分に発揮しただけに、アイルランド戦ではフッカー陣と同様に安定感を問われることになりそうです。
また、控えのスタンドオフにはスティーブン・ペロフェタ(ブルーズ)が入りました。順当と言えば順当ですが、ペロフェタは今季、スーパーラグビーも含めて負傷が多くプレー時間が足りていません。そのため、個人的には安定感でブルーズ優勝の立役者となり、オールブラックスXVでもいい動きを見せていたハリー・プラマーの方がよかったのではないかと思いました。ただ、プラマーがカバーできるCTBは、イングランド戦でのヘッドコンタクトがレッドカードに格上げされずにアイルランド戦も出場できることになったアントン・レイナート=ブラウン(チーフス)が控えています。そのため、イングランド戦で控えだったマッケンジーと同様にフルバックもこなすペロフェタが選ばれたのかもしれません。
SHロイガードはベンチのまま
そのほかのメンバーはイングランド戦から変わりませんでした。スクラムハーフは、ラック周りの動きを考慮するとキャム・ロイガード(ハリケーンズ)が先発となるかとも思いましたが、9番はコルテス・ラティマ(チーフス)のままに。ラティマはイングランド戦では試合の入りはやや不安定でしたが、徐々に落ち着きを取り戻してきびきびした動きを見せていました。ロイガードは後半からのインパクトが期待されているのかもしれません。
また、イングランド戦は「内規違反」で選外となっていたPRイーサン・デグルート(ハイランダーズ)でしたが、この試合も引き続きメンバー外となり、1番はタマイティ・ウィリアムズ(クルセイダーズ)です。また、イングランド戦では強力なインパクトプレイヤーとなったLOパトリック・トゥイプロトゥ(ブルーズ)と、FLサミペニ・フィナウ(チーフス)はそのまま控えとなっています。
セクストンVSイオアネが「スパイス」
両チームは、ABが下馬評を覆して勝利した昨年のワールドカップ準々決勝以来の再戦となり、ABの先発9人がその試合のメンバーでした。準々決勝修了後には、その試合で現役を引退したアイルランドのSOジョニー・セクストンとABのCTBリーコ・イオアネ(ブルーズ)が口論になったという因縁があります。セクストンは最近出版された自伝でもそのことを蒸し返して話題となっていました。
そのセクストンは、今回のAB戦に向けてアイルランドのスポットコーチを務めているとされています。また、AB側もイングランド戦でハカをリードしたテイラーを欠くため、イオアネがハカのリード役候補の一人に挙げられ、両者の動向が試合にちょっとした「スパイス」を添える形となっています。
順当に行けばハカのリード役は過去に経験があるNo8アーディ・サヴェアが務めることになりそうですが、2016年にアメリカ・シカゴでアイルランドが初めて勝って以来、2022年にはニュージーランドでアイルランドが勝利するなどライバル関係を築いてきた両チーム。さまざまな形で注目度が高まっています。



