ご存じの通り、昨年のラグビーワードカップ(W杯)後にオールブラックス(AB)の選手が大量にリーグワンに移籍し、今シーズンは活動の場を日本に移しています。こちらニュージーランドでも日本のラグビーシーンがニュースで取り上げられたりすることがにわかに増えています。さらに今月に入って、ABの新ヘッドコーチ、スコット・ロバートソンがリーグワンを視察したり、現在プレーを休んでいるABの正フッカー、コーディ・テイラーがブレイブルーパスのメンバー席で試合を観戦する姿がとらえられたりしたほか、ナショナルラジオ局のRNZがNZの選手がなぜ日本に向かうのかについてのまとめ記事を配信しました。その記事を読んでいろいろ考えさせられたので、ちょっと考えをまとめてみたいと思います。
バリバリのオールブラックス大量移籍
日本とNZのラグビー交流は今に始まったわけではなく、キーウィ選手が日本でプレーする例は枚挙にいとまがありません。言うまでもなくリーチ・マイケルやワーナー・ディアンズは高校時代に来日しています。スーパーラグビーからの移籍でも、今年スティーラーズに加入したSOブリン・ガットランドはブルーズやチーフスでプレーしてますし、ワイルドナイツのPRクレイグ・ミラーのようにハイランダーズから移籍して日本代表になった選手もいます。ですから、今年特に話題になっている理由はやはりABの大量移籍です。
昨年のW杯メンバーでいうと、アーロン・スミスとボーデン・バレットがヴェルブリッツ、アーディ・サヴェアとブロディ・レタリックがスティーラーズ、リッチー・モウンガとシャノン・フリゼルがブレイブルーパス、サム・ケインがサンゴリアス、デイン・コールズがスピアーズに加入しています。これはかなりのそうそうたるメンバーで、サヴェアは昨年の世界最優秀選手ですし、バレットも受賞経験者(2回)、ケインはキャプテンでした。日本でもリーグワンの人気拡大に大いに貢献しているようですが、NZでもリーグワンに対する関心がにわかに高まり、各節1試合ずつネット中継されるようになったほどです。
金銭面や環境面などが理由
これだけの選手たちが日本に移籍した理由については、さまざま指摘されていますが、上記のRNZ記事も金銭面や環境面、文化面を挙げています。当然一番に思い浮かぶのは金銭面で、RNZ記事でもモウンガは1シーズン200万NZドル(日本円で約1億8000万円相当)得ているとされるとしています。世界的なスタンドオフにしては少ない気がしますが、NZでの報酬よりは高額なのでしょう。バレットは6カ月で150万NZドルだそうです。日本も経済的な停滞が長く、日本人の実感としては日本人がカネを持っているという感覚はもはやありません。NZで生活する身としては、むしろ円安とNZの物価の高さに汲々としているのが実態です。しかし、両国のGDPは雲泥の差がありますし、支払い報酬にも差があるとなれば、NZの人々が、日本が経済力に物を言わせているという印象を持つのも仕方ないことなのでしょう(記事ではそうとは明言されていませんが)。
その他の要因では、スピード感のある日本のラグビーが、キックが多い泥臭いヨーロッパラグビーよりもキーウィ選手に合っている、という指摘もありました。また、文化面では、これはどちらかと言うとマイナス面ですが、ディアンズの父親で東葛グリーンロケッツのコーチだったグラント・ディアンズさんが、日本時代にラグビー選手が自転車で歩道を走ったり、ヘッドホンで音楽を聞いていたりすると苦情が来るという「厳格な社会規範」を感じたことを指摘していたのも印象的でした。
今季のスーパーラグビー、見劣り
さて、これだけの有名・有力選手が抜けると懸念されるのが地元リーグであるスーパーラグビーの地盤沈下です。今シーズンの観客数や視聴率などのデータが手元にないので正確なところは分かりませんが、私のようなミーハーなファンにとっては今年のスーパーラグビーは昨年に比べて見劣りすることは否めません。正直言って、私は昨年でさえ、スーパーラグビーの試合の空席の多さに驚いたのですが、その傾向に拍車がかかったような気がします。
(「選手流出㊦ 流動化は止まるのか」につづく)


