ラグビーのニュージーランド代表オールブラックス(AB)のスコット・ロバートソンHCは、11月16日(NZ時間17日)にパリのスタッド・ド・フランスで行われるフランス戦のメンバーを発表しました。前週のアイルランド戦はヘッドノックの影響で出場不能となっていたベテラン2人を先発に戻すなど、ここのところのチームの好調さを受けた層の厚さを感じさせる充実の布陣で昨年のワールドカップ開幕戦の雪辱を目指します。
ABにとって毎週難敵を迎えることから「史上最も過酷な日程」と言われた今年の欧州遠征。初戦のイングランド戦を2点差で逃げ切ると、先週は下馬評を覆して世界ランキング1位だったアイルランドを破って連勝を果たして波に乗っています。
10番ボーデン、2番テイラー
アイルランド戦は、イングランド戦で脳震盪となったためにSOボーデン・バレット(ブルーズ)とHOコーディ・テイラー(クルセイダーズ)が出場できませんでした。しかし、その「代役」となったSOダミアン・マッケンジー(チーフス)とHOアサフォ・アウムア(ハリケーンズ)が大活躍し、勝利の原動力となりました。
フランス戦ではこの布陣がもとに戻り、ボーデンとテイラーがそれぞれ10番と2番を着けることになりました。特にロバートソン体制当初の正SOだったマッケンジーがどうなるかが注目されていましたが、アイルランド戦のボーデンの選外はパフォーマンス上の理由ではなかったことから、コンシステンシー(一貫性)を重視してボーデンを10番に戻したのだと思われます。マッケンジーは控えに回りますが、これによって、次週のイタリア戦でマッケンジーが先発することになれば、この遠征は2人が1試合交代で10番を着けることにもなります。
「ケイン後」占う第3列
一方、アイルランド戦で頭に切創を負い、脳震盪とも診断されたFLサム・ケイン(サンゴリアス)が出場不能となりました。このため、期せずしてケインが代表から退く来季以降の「ケイン後」のフォワード第3列を占う形となりました。結果は、メディアなどで呼び声の高かった7番アーディ・サヴェア(モアナパシフィカ)、8番ウォレス・シティティ(チーフス)の布陣となり、6番にはサミペニ・フィナウ(チーフス)が入ります。
アイルランド戦の後半にフィナウがケインに代わって入った際にも試された布陣ですが、先発では初めてとなります。ケインの「代役」的な位置づけで来ているダルトン・パパリイ(ブルーズ)や、調子のよかったイーサン・ブラックアダー(クルセイダーズ)をケガで欠くため、「やむを得ず感」は否めませんが、No8が本職のシティティの持ち味であるランプレーが生かせる布陣であるのも確かです。そういう意味では、スティーラーズで着けていた背番号とはいえ、昨年の世界最優秀選手のサヴェアが「ポジションを取られた」という見方もできないこともなく、シティティの勢いたるや、恐るべしです。
「ケイン後」を考えると、シティティを6番に残して、7番にはABの次世代を担う人材の1人とされ、日本戦でデビューを果たしたピーター・ラカイ(ハリケーンズ)を起用する手もあったかと思います。ただ、少なくても来季を考えると、サヴェア、シティティの7、8番に、日本から戻るシャノン・フリゼル(ブレイブルーパス)を6番に入れた布陣が、NZが抱える最高の才能をフルに生かせるような気がします。ちなみにラカイはフランス戦ではベンチに入りましたので、途中出場を楽しみにしたいと思います。
ウィング1枠に多用な可能性も…
また、こちらもアイルランド戦で負傷したWTBマーク・テレア(ブルーズ)の後にはセヴ・リース(クルセイダーズ)が戻って来ました。このリースですが、確かに起用されながら目立った活躍をしていないので仕方がない面はあるのですが、クルセイダーズHCとして7連覇を果たしたロバートソンHCの「クルセイダーズ・バイアス」の象徴のような言われ方もしていて、やや気の毒になってきたので、本領発揮を期待したいと思います。
ただ、このウィングの1枠については様々な可能性があったのも確かです。例えば、昨年のようにFBのウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)をWTBに回してマッケンジーやスティーブン・ペロフェタ(ブルーズ)をFBで先発させることもできましたし、ビリー・プロクター(ハリケーンズ)かアントン・レイナート=ブラウン(チーフス)をCTBで先発させて、これまでも試合途中でちょいちょいやっているリーコ・イオアネのWTB起用をスタートからやってみる手もあったと思います。
さらに、本職のウィングに関して言うと、正直言って私としてはエモニ・ナラワ(チーフス)やティモシー・タヴァタヴァナワイ(ハイランダーズ)あたりをABで観てみたかったです。しかし、テレアのケガを受け、またもやクルセイダーズのチェイ・フィハキが追加招集されるに及んでさすがに言葉を失いました。
先発SHはロイガードに
一方、先発SHはコルテス・ラティマ(チーフス)からキャム・ロイガード(ハリケーンズ)に変更となりました。ラティマはアイルランドのプレッシャーに苦しみましたし、先週の日本戦でセブンスから復帰した世界最高のSHアトワーヌ・デュポンとのマッチアップを考慮して、よりタフなロイガードが起用されたのだと思われます。
また、ルースヘッドプロップのイーサン・デグルート(ハイランダーズ)は今回も選外で、1番は再びタマイティ・ウィリアムズ(クルセイダーズ)です。控えのオファ・トゥウンガファシ(ブルーズ)も含め好調とはいえ、デグルートはイングランド戦前の「内規違反」以来音沙汰がないので、やや気になります。
今回の遠征で最大の強敵だったアイルランドを倒して峠を越した感は否めない今回の欧州遠征ですが、世界4位のフランスも言うまでもなく難敵です。ABがパリでフランスに勝ったのは2017年が最後で、TABのオッズもAB$2に対しフランス$1.75とフランスやや優位に出ています。ABにとってはアイルランド戦の勢いを持続できるかがカギになりそうです。



