オールブラックス(AB)は9月7日、ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)の南アフリカ代表スプリングボクスとの第2戦をケープタウンのDHLスタジアムで行い、12ー18で敗れました。第1戦に続いて前半はリードして折り返したものの、ノートライのまま後半に力負け。ABは2010年以降防衛してきたスプリングボクスとの間で争われている「フリーダムカップ」を失ったうえ、スプリングボクス戦は昨年のトゥイッケナムでのワールドカップ前哨戦以降、75年ぶりの4連敗となってしまいました。
アパルトヘイト時代に大勢の黒人ファンが白人のチームだったスプリングボクスではなく、オールブラックスを応援していたことから、今日もABファンが多いことで知られるケープタウン。2017年以来の当地への遠征とあって、この日の客席はブラックジャージーが少なくとも先週のエリスパークよりは目立ちました。
前半リードもノートライ
ABはリザーブの選手のインパクトの差が出て終盤に逆転された前週の敗戦と、その試合での負傷者の影響でオーダーをかなり入れ替えてきました。一番大きい変化はブースタープレイヤーとするためにSHのTJペレナラ(ハリケーンズ)と、イングランド戦での途中出場で驚異的な活躍をしたFBボーデン・バレット(ブルーズ)をベンチに下げたことでしょう。それぞれ先発はSHが若手のコルテス・ラティマ(チーフス)、FBは先週はWTBとして出場したウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)となりました。また、ブラインドサイド・フランカーのイーサン・ブラックアダー(クルセイダーズ)の負傷を受けて、No8が本職の期待の若手、ウォレス・シティテイ(チーフス)が6番で先発出場しました。
一方のスプリングボクスは、逆に前週は終盤までリードを許したからか、SOハンドレ・ポラードやFBウィリー・ルルー、LOエベン・エツベスら大物が先発に名を連ねました。それぞれ好対照の変更の加えたことが、第2戦の主な見どころとなりました。
試合は開始早々、スプリングボクスのSHグラント・ウィリアムズのラックからの球出しが遅れ、ABは敵陣でスクラムを得ます。しかし、このスクラムやや押され気味だったうえ、続くスクラムも押し込まれます。それでも、前半はノートライながらペナルティをPGで着実に加点し、9-3とリードして折り返します。
しかし、後半に入るとスプリングボクスの圧力が増してABの規律が乱れます。スプリングボクスは48分、コーナーへのタッチからのラインアウトでWTBチェスリン・コルビがスロワーを務めるトリックプレー。モールを押し込んだうえ、FWの連続攻撃からキャプテンのFLシア・コリシがこの試合最初のトライを挙げます。コンバージョンも決まって9-10で逆転されます。その後はPGを一本ずつ決めて12ー13となり、今季のTRCでABが得点できていない「魔の最終クォーター」を迎えます。
6番シティティは光明
すると、第1戦と同じような展開となり、72分にPRタイレル・ロマックスがパントをチェイスしようとしたコルビに接触したとしてイエローカードを受け、シンビンとなります。その後のラインアウトからモールのサイドを突いた途中出場していた「ボム・スコッド」の中心選手、HOマルコム・マークスにフィニッシュされ、万事休すとなりました。
これでABは今季のTRCで4試合を終えて最後の20分間に一度も得点できないままとなってしまいました。この試合で特に痛かったのはSOダミアン・マッケンジー(チーフス)が後半にPGを3本外したことです。しかし、うち2本はこれまではCTBジョーディ・バレット(ハリケーンズ)が蹴っていた50メートル前後の距離がある位置からで、調子の問題などもあったのかもしれませんが、なぜあえてマッケンジーが蹴ったのか、あるいは特にハーフウェイライン手前の位置からのキックはなぜタッチを選択しなかったのか、よく分かりませんでした。
また、先発メンバーの入れ替えに関しては、シティティの6番は機能しており、特に前半は積極的なボールキャリーが光っていました。しかし、後半の59分にあっさりと交代となり、勢いの面からも非常に残念な気がしました。また、ジョーダンの15番はあまり機能していたとはいえず、特に第1戦で好調だったWTBケイレブ・クラーク(ブルーズ)が負傷して出場できなかった以上、ジョーダンはWTBでの出場の方がよかったような気がします。ただ、SOとFBをこなすスティーブン・ペロフェタ(ブルーズ)も離脱しているので、層の厚みを考えるとここは難しいところなのかもしれません。
根強い「先発信仰」?
しかし、それよりも気になったのは、キャプテンのスコット・バレット(クルセイダーズ)が試合前、先発から外れたことに兄であるボーデンが「少し落ち込んでいる」と明らかにしたことです。弟しては兄がチームのために犠牲になっていることを強調したかったのかもしれまえんが、これについてはスコット・ロバートソンHCもボーデンと、同じく控えに回ったペレナラの2人と「厳しい話」をしたことを認めていました。特にベテランにこのような先発へのこだわりが強く残っているのだとすると、ベンチからのインパクトを考えるうえで足かせになるように思います。
先発・控えを合わせた23人の選手どのように組み合わせるのかを総合的に検討するのが、選手交代の自由化後、近年のラグビーのチーム編成で重要な要素になってきていますが、世界トップのABでもその辺りの発想の転換は進んでいないのかもしれません。この日の試合でも特にプロップの交代の遅さが気になりましたが、これは選手層の問題だけではなく、上記のような発言を鑑みると、首脳陣にも「先発信仰」が根強く残っていることが影響している可能性もあるような気がしました。
さて、今季のTRCは南アの優勝が濃厚となり、ABは2週間後のブレディスローカップからオーストラリア代表ワラビーズとの2連戦で締めくくりとなります。ワラビーズ戦は、選択肢を増やすための選手の「お試し」起用が増えることが予想されます。ただ、新しいチームで負けが続いているので仕方がない面があるものの、これまでのところ選手起用や交代などの采配に一貫性を欠く印象があるのも事実なので、その後のアイルランドやフランスとの厳しいテストマッチが控えた欧州遠征に不安が拭いきれません。


