負傷多く「お試し」 不完全燃焼

オールブラックス、フランス戦3連勝総括(前編) ラグビー

ラグビーのニュージーランド代表オールブラックス(AB)は今季最初のシリーズとなるフランス代表との3連戦を3連勝で終えました。SHアントワーヌ・デュポンをはじめとする主要選手のほとんどがスコッド入りしていないフランス代表が相手だったので、ABも様々なことを試したシリーズとなりました。選手の負傷も多く、想定以上に苦戦を強いられ、「レーザー」ことスコット・ロバートソンHCのセカンドシーズンもやや不完全燃焼な出だしとなりました。2回に分けて選手起用面を中心に考察します。

第1戦、第2戦は苦戦

まず、南島のダニーデンで7月5日の行われた初戦は、4点差の31ー27。前半先制を許してから逆転したものの、終盤に1点差に迫られ、最終的にPGで逃げ切るという薄氷の勝利でした。

翌週の12日に首都ウェリントンで行われた第2戦は43ー17と大勝しますが、19日にハミルトンで行われた最終戦は再び苦しい試合に。ハーフタイム時点で17ー19とリードを許しますが、後半は何とかフランスを無得点に抑え、この日初キャップのHOブローディ・マカリスター(チーフス)らの2トライで逆転しました。

第1戦と第3戦は負けていてもおかしくない試合で、第2戦についてはフランスは今回の帯同メンバーの中でもかなり若いチーム編成となっていたことを考えると、試合結果としてはABにとって物足りないものでした。

センター「お試し度」高く

一方で、同じくホームでの試合だったとはいえ、新チーム発足直後にいきなり「ガチンコ」の試合だった昨年のイングランドとの連戦と比べると、けが人が多いというやむを得ない事情もあったものの、各ポジションの層の厚さを増すことを見据えた選手起用ができるシリーズともなりました。

その中でも最も「お試し度」が高かったのはセンター(12、13番)だったのではないかと思います。昨年までは12番ジョーディ・バレット(ハリケーンズ)、13番リーコ・イオアネ(ブルーズ)というパターンが定着していましたが、今季は初戦からイオアネを左ウイングに回して、13番にビリー・プロクター(ハリケーンズ)を起用しました。

第2戦も同じ布陣で臨み、チーフスの地元ハミルトンで行われた第3戦は長期の負傷離脱を経てスコッド入りをしていたクイン・トゥパエアを12番で起用し、13番には同じくけがから復帰したアントン・レイナート=ブラウンが入り、チーフスのコンビとなりました。

また、ベンチには3戦ともティモシー・タヴァタヴァナワイ(ハイランダーズ)が入り、ABデビューを果たしています。初戦の国歌斉唱の際に涙を流す姿が印象的でした。

イオアネのウイング起用が際立つ

全体として、ハリケーンズでのコンビでもあるバレット、プロクターのコンビは機能していたように思いますが、むしろその結果、悪目立ちすることになったのがイオアネのウイング起用でした。

イオアネはもともとウイングの選手で、昨季のテストマッチでもアルゼンチン戦との第2戦などでも試合途中からウイングに回った例はちょくちょく見られました。しかし、昨季もさほど機能していたようには見えませんでしたし、今季の初戦に関しては「プロクターを使いたいが、かといってイオアネを使わないのはもったいない」というような判断なのではないかと思えました。

あるいは、ロバートソンHCらはイオアネがファーストチョイスになるくらいウイングが不足していると考えているのかもしれません。

初戦にウイングで先発起用されたのはイオアネとセヴ・リース(クルセイダーズ)で、リースが早々に負傷交代すると、ウィル・ジョーダン(クルセイダーズ)がフルバックから回りました。2戦目はイオアネとケイレブ・クラーク(ブルーズ)の予定でしたが、練習中の負傷により、エモニ・ナラワ(チーフス)に代わります。第3戦はフルバックにルーベン・ラヴ(ハリケーンズ)が入り、ウイングはリースとジョーダンという体制でした。要するにかなりスクランブル態勢でした。

昨シーズン大活躍で、ハイボールに強いクラークを初戦のメンバーに入れなかった理由は謎(あるいはけがかもしれません)ですが、いずれにせよ、ジョーダンをフルバックに起用し、マーク・テレアがいなくなり(テレアは厳密にはまだいなくなっていませんが、いなくなることが分かっている若手はABに選ばれないという不文律みたいなものがあります)、ウイングが途端に手薄となった印象です。

ジョーダンの起用法、再考必要

それなのにナラワのプレー時間が足りなかったのは残念ですし、センターからのコンバートならむしろタヴァタヴァナワイをウイングでの先発起用してほしかったような気がします。ハイランダーズ移籍後のセンターへのコンバートでスティールなど球際の強さが光っていますが、モアナパシフィカ時代のウイングでの活躍も見事でした。3戦ともベンチ入りしながら、全体として出場時間が短かったのも残念でした。

あとはやはりジョーダンの起用法なのではないかと思います。ジョーダンはフルバックが本職ですし、その方がボールを持ってアタックをする機会が増えるのですが、一方でフルバックに関してはダミアン・マッケンジーやラヴら他にもハイレベルな選手がひしめいているのも確かです。チーム全体の向上を考えると、私はジョーダンはウイングでの起用の方がいいのではないかと思います。(後編につづく)

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